XOXO
(いつか夢見たストーリィを文字で表すことを生業としている彼女、その左手には、)
蠢く虹彩が吸い込むのは僕の渋面で、色彩を忘れたあなたの大脳が捉えるのは薄鈍の風物。反射した光たちは容易く僕を貫く。傷をつけない刃は幾多の思い出を切り刻んでいた。
(踊る心臓の音を僕は綺麗だと思わない/いくら命が綺麗だからと言っても、心臓の形に美を見いだせない)
皮膚の下には血と肉、それからたましい。ナイフを押しつけるだけで壊れてしまう、繊細なつくり。痛みの無い僕のクロニクル。夢を乗り越えて掴んだ愛。かなしみ、たからかなわらいごえ。
(遠くから聞こえるのは、僕の耳鳴と、あなたのうたごえ)
まぶた、痛みの無い痛み、涙腺を経由して流れるそれは何なのですか、歌われた歴史、書き記された愛を、君を愛している、ずっと一緒にいよう、いっしょにしにましょう、冷たいひかり、そして、リアルをみるあなたの虹彩。本当に見たかったのは、他でもない、彼女なんだ。
(痛いと言って泣き叫びたい、笑いたい。左手に残っていたのは消えかけた温度だけ)
《Back|Next》