RADWIMPS「セツナレンサ」の二次創作です。
 原曲を聴いた上で、混宮の個人的な解釈と多量の創作部分を加えております。原曲の世界観を壊したくないという方はブラウザバック。批評は受け付けますが、解釈に関しての意義は御遠慮下さい。以下自己責任でスクロール。







セツナレンサ

 夜、くらく汚らしいだけの路地裏で、ホームレスを一人殺した。首を絞めた。右腕と、左腕と。力を込めただけで、ひとが殺せるということに少し驚いた。周りにはたくさんの人間がいたけど、誰も咎めはしなかった。きっと、みんな殺されたかったのだろう。

 アルマという友人がいる。売れない役者だ。アルマは普段、映画監督に体を売って役を貰っていた。いつだったか、体で金を稼ぐなら風俗の方が儲かるということを教えてやったら、アルマはこう言い返してきた。
「風俗って、何も残らないじゃない。どうせなら、後世に何かを残したいって、思わない?」
 アルマには生まれつき子宮が無いらしい。初めてアルマのもとで寝た夜に、そう告げられた。外見からはよく分からないのだが、本人が言うからにはきっとそうなのだろう。
「あんたみたいな男にはわからないのよ。最初から何も産むことができない、男には」
 避妊具をつけなくてもいいから楽だろうと言ったら、笑われた。それから「馬鹿男」と呟いて、泣いた。アルマの言うことはよくわからなかったけれど、確かに自分は馬鹿な男だと思った。ほら、だって、こんなにもアルマを恋しく思う。

 ホームレスのかばねを放置し、路地裏をあとにする。大通りにはたくさんの生きている人間がいて、だけど、どのひとも死んだように暗い顔をしていた。人ごみにまぎれるようにして顔をしかめ、足早に家を目指す。アルマの家だ。アルマは大通りに面した小さなアパートに住んでいた。こんな気分の夜には、アルマに会いたくなる。

 ホームレスの首を絞めたのに、理由など無かった。アルマに会いたくなるのにも、理由なんて無い。殺してみたいと、会いたいと、ただひたすらに思った。かなしいのだろうか、寂しいのだろうか。いつから自分はこんなにも曖昧になってしまったのだろうか。薄れた感情の奥に沈んでいるこれは、一体なんなのだろうか。懐疑と共にこころにあるのはきっと、

(セツナイ?)

 会ってすぐに、アルマを抱きしめた。そして、アルマと一緒に眠った。僕たちはとっても不完全で、きっとたくさんのものが欠けている。それらがどれだけ大切なものだとしても、僕たちはこのままで生きていかなければならない。また、明日を迎えなければならない。いつまでも続いていく今日だけど、今、今このときだけは、アルマと眠っていたい。こころの中で笑って、泣いて、僕たちは続くことができる。



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