colorful
小鳥が一羽死んでいた。春風の運ぶ微熱に溶けそうな薄群青の羽をたたんで、窓辺に横たわっていたのだ。僕はそれを部屋に持ち帰った。だって、美しかったから。
名付けることはしなかったから、僕は小鳥のことを君と呼んだ。君、生きていた頃はどんな空を飛んでいたのかい。君が見る空の色は美しかったのかい。その美しい羽はどんな風を感じたのかい。僕は語りかけてみたけど、残念ながら君は答えてくれなかった。
僕は空を見たことが無いんだ。噂によれば、とても美しい色をしているそうじゃないか。僕は空を見たことが無いんだ。君は、その羽で空を泳いだんだろう? ああ、羨ましい。今すぐにでも毟ってやりたいよ。
インターネットで鳥籠を買ってみたんだ。天辺には微笑む天使の装飾がしてあって、とても綺麗なんだよ。君が入れば完璧だね。入ってくれるかい。君は答えてくれなかった。
僕の部屋には一つの鳥籠がある。中には君の亡骸が。とても美しいよ。きっと、話に聞く空よりも美しいだろうね。僕は確かめに行かなければならない。君の飛んだ空がどれ程美しいのか。君が舞い降りた窓から、僕は飛び立つよ。
心残りは殆ど無いけれど、遥かなる空へ旅立つ前にただ一つだけ愛が欲しい。だから、僕は鳥籠を掴んだんだ。
狭い部屋の中で、精一杯の助走をつける。
ようやくカーテンが開いたこの部屋には、目が眩むような日差しが差す。
僕の胸では君が横たわっている。
君の頭上では天使が微笑んでいる。
君が運んできてくれた色を、僕は目にするよ。
春風、カーテンが揺れて……。
鮮烈な、色!
(dead end)
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